PM(生産保全)とは?基本的な考え方と4つの活動をわかりやすく解説
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製造業の重要指標を底上げする鍵は、設備のライフサイクルコストの最小化にあります。そのための重要なアプローチが「生産保全(PM)」です。
しかし、言葉は知っていてもPMとTPMの違いや、予防保全と事後保全のどちらを採用すべきか、といった具体的な運用で迷うケースも少なくありません。
本記事では、生産保全の基本から、現場で使い分けるべき「4つの保全活動」などを体系的に解説します。自社に最適な保全計画を立案し、無駄なコストを削ぎ落とすヒントを手に入れてください。
PM(生産保全)とは?
生産保全(Productive Maintenance)とは、設備の故障を未然に防ぎ「生産性・品質・安全性」の3要素を維持・向上させるための考え方および活動の総称です。
主な目的は、単に故障した機械を修理するだけではありません。設備の導入から廃棄までの生涯コスト(ライフサイクルコスト)を最小化し、企業の利益を最大限高める点にあります。
なかでも設備の状態を管理し、常に最良の状態での稼働を維持する取り組みによって、トラブルによる生産停止や品質不良といった損失を防ぐ戦略的な保全としての役割を担っているのが特徴です。
生産保全は設備・人・工程を含めた総合的な観点から、生産性を高めるために必要な枠組みなのです。
PM(生産保全)が求められる理由
製造現場において生産保全の重要性が高まっている理由は、設備停止が経営に与える影響が増大傾向にあるためです。
現代の工場では設備の自動化・高度化が進んでいます。ひとつの設備トラブルがライン全体の停止や生産計画の遅れ、それらに伴い納期延長の要因となります。さらに、発生したトラブルによって顧客からの信頼を失う可能性も少なくありません。
設備の老朽化や熟練技術者の減少により、突発的な故障対応に追われる「事後保全」中心の運用では、現場の負荷が増大し続けるという課題も無視できないでしょう。
上記の理由により、故障を未然に防ぎ、計画的に設備を管理する生産保全の重要性が高まっている流れです。
まとめ
生産保全は設備停止による損失を防ぎ、企業の利益と信頼を守る「攻めの保全」といえる重要な経営戦略です。
PM(生産保全)を構成する4つの基本活動
生産保全は目的や実施するタイミングによって、次のような手法に分類されます。
- 保全予防
- 予防保全
- 事後保全
- 改良保全
それぞれの手法は単独で実施するものではなく、必要に応じて随時実施される活動です。各現場の状況や設備の重要度に合わせた実施によって、効率的かつ経済的な設備管理が可能となります。それぞれの活動における特徴と役割を、詳しく見ていきましょう。
保全予防
保全予防(Maintenance Prevention)は、新しい設備を計画・設計する段階から、将来的に故障しにくく、かつメンテナンスしやすい状態を作り込む活動です。
生産保全の主目的は、導入から廃棄までのコストを抑える点にあります。その第一段階として「そもそものトラブルを起こさない設備」の導入が、保全活動の源流といえる対策といえます。
具体的な活動内容は、過去の設備で発生した故障データや保全記録を分析し、得られた知見を新設備の設計仕様へと盛り込む点です。摩耗しやすい部品に耐久性の高い素材を採用したり、点検口をアクセスしやすい位置に配置したりといった工夫が該当します。
設計段階で保全性を高めておけば、導入後のメンテナンスコストや工数も大幅に削減でき、長期的な安定稼働が実現できます。
予防保全
予防保全(Preventive Maintenance)は、設備が故障して停止する事態を防ぐために、あらかじめ定めた計画に基づいて点検や部品交換を行う活動です。多くの製造現場で実践されている、生産保全の中核を担う取り組みのひとつです。
一般的には、設備の使用期間や稼働時間に基づいて実施する「時間基準保全」と、センサーなどで設備状態を監視しつつ、劣化の兆候が見られた時点で点検する「状態基準保全」の2種類があります。
故障の予兆がない場合でも、定期的な部品交換によって、突発的なトラブルのリスクを低減でき、計画通りの生産活動を維持できる点が実施するうえでのメリットです。
ただし、まだ使える部品まで交換してしまうと「過剰保全」にもなるため、適切な周期の見極めが必要な活動といえます。
事後保全
設備に故障や機能低下が発生したあとに、修理や部品を交換して機能を回復させる活動が事後保全(Breakdown Maintenance)です。
「壊れてから直す」という受動的な対応ですが、現実的にはすべての設備に対してコストのかかる予防保全は実施できません。そのため、戦略的に事後保全が選ばれるケースもあります。
たとえば、万が一、故障しても生産ライン全体への影響が少なく、かつ修理が容易で安価な設備であれば、事後保全の方がコストを抑えられるケースも少なくありません。
しかし、重要設備で突発的な故障が発生すると、生産停止や品質不良、安全事故などの重大なリスクを抱える結果につながります。リスク回避のためにも、事後保全だけに依存した運用は避けるべきといえるでしょう。
改良保全
改良保全(Corrective Maintenance)は発生した故障の修理だけでなく、設備自体を改良して再発防止や性能向上を図る活動です。同じ故障を起こさないという視点から、設備の弱点を克服し、より信頼性の高い設備へと進化させます。
具体的には、故障の原因を根本から分析し、部品の材質変更や構造の見直し、強度向上などを実施します。また、点検作業がしにくい箇所を改善して、保全性を高めることも改良保全の一部です。
注意点としては、原因特定の際は、数値的あるいは物理的な根拠を判断基準とすることです。原因を見誤ったまま対策を進めてしまうと、不具合がなくならないどころか、二度手間になってしまいます。
地道で時間もコストもかかる改良保全ですが、継続によって設備寿命が延び、メンテナンスにかかる時間やコストの削減が期待できます。
まとめ
4つの保全活動を設備の重要度やコストに応じて使い分けることが、効果的な生産保全を実現するカギとなります。
PM(生産保全)とTPMの関係
「PM」と「TPM」は、言葉が似ているため混同されがちですが、実際の役割や目指す範囲には明確な違いがあります。
自社の保全活動をより効果的に進めるためには、両者の関係性の正しい理解が必要です。ここからは、TPMの定義とPMとの違いについて整理します。
TPMとは何か
TPM(Total Productive Maintenance)は、PMの考え方をベースに、製造部門だけでなく全社・全員参加で推進する組織的な管理手法を指す用語です。「全員参加の生産保全」と訳され、日本プラントメンテナンス協会によって提唱された背景があります。
最大の特徴は、トップから現場のオペレーターに至るまで、企業のあらゆる階層が小集団での活動などを通じて保全に関わる点です。
設備管理は一部の部署や人材だけで賄える業務ではありません。自分の設備は自分で守る、という自主保全の考え方を全社に定着させ、故障や不良、災害といったロスの削減を目指す取り組みがあって初めて成立します。
TPMは単なる設備管理にとどまらず、人と設備の体質改善を通じて企業体質そのものを強化する重要な経営手法のひとつとして位置づけられているのです。
PM(生産保全)とTPMの違い
PM(生産保全)とTPMの違いをひと言で言えば、下表のように「保全手法そのもの」か「保全を実行する組織的な仕組み」という点に違いがあります。
| 項目 | PM | TPM |
|---|---|---|
| 定義 | 保全の手法・技術 | 保全を実行する組織的な仕組み |
| 目的 |
|
災害・不良・故障による製造ロスの削減 |
| 実施主体 | 保全の専門家が担当 | 全従業員 |
| 特徴 | 「私が直し、あなたが使う」という分業 | 「自分たちの設備は自分たちで守る」という自主保全 |
PMが保全部門を中心とした活動であるのに対し、TPMはオペレーターによる自主保全や、事務・管理部門も含めた全社的な参加を必須条件としています。
つまり、PMという技術的な土台の上に、組織力で効果を高めるTPMという仕組みが乗っているようなイメージといえるでしょう。
まとめ
PMは保全の技術・手法であり、TPMはPMを全員参加で実行し、成果を高めるための組織的な取り組みです。
PM(生産保全)の実践
生産保全は概念的な枠組みであり、実際に現場で運用する際は、具体的な保全手法と組み合わせて実践されます。現場の設備規模や人員配置によって最適な手法は異なるため、それぞれの手法を選択・併用する取り組みが重要です。
ここからは、代表的な2つの実践手法について解説します。自社の場合はどちらの手法と相性が良さそうか、イメージしながらチェックしてみてください。
定期保全(TBM)との関係
定期保全(Time Based Maintenance)は、あらかじめ定めた期間や時間、使用回数を基準にして点検や部品交換する手法です。一例として、次のような実施ルールが挙げられます。
- 稼働1,000時間ごとに設備のオイル交換
- 毎月第1月曜日に、非常停止ボタンの動作を確認する
実施計画が立てやすく、管理が容易な点が定期保全のメリットです。反面、使用可能な部品まで交換してしまう「過剰保全」によるコスト増や、交換直後の初期不良リスクといった課題もあります。
状態基準保全(CBM)との関係
状態基準保全(Condition Based Maintenance)は、振動、温度、電流値といった監視データをもとに、保全を行う手法です。
監視データから、劣化の兆候が見られたタイミングでメンテナンスするため、部品をギリギリまで使用できるほか、早期検知による故障の抑制も期待できます。
初期導入コストはかかりますが、設備の稼働率を高めつつも保全コストを最適化できるため、高度な生産保全を実現するための有効な選択肢の一つです。
まとめ
設備の特性に合わせて、管理しやすいTBMと効率的なCBMを組み合わせる取り組みこそ、生産保全の実践における要点です。
PM(生産保全)を理解するうえで押さえておきたいポイント
生産保全に取り組む際は「これが正解」という手法が存在しないことを理解しておかなければいけません。企業の規模や業種、抱えている課題によって、最適な保全の形は異なるためです。
生産保全は、特定のツールを導入すれば完了する類の活動ではありません。自社の状況に合わせて、考え方を柔軟に適用していく継続的な活動です。
たとえば、生産ラインの要となる重要設備にはコストをかけてでも高度な予防保全を適用する、故障しても代替が効く汎用設備は事後保全で対応するなど、メリハリのある運用設計が求められます。
自社のリソースとリスクのバランスを見極め、最適な保全環境を構築していく意識こそが、生産保全の本質といえます。
まとめ
PMに絶対的な正解はありません。活動内容とコストのバランスを見極めながら、手法を使い分ける取り組みが大切です。
PM(生産保全)で設備を守ろう
PMは設備の故障トラブルを未然に防ぎ、安定した生産活動を維持・向上させるための重要な経営手法です。4つの基本活動を理解し、自社の設備特性やリスクに応じて戦略的に組み合わせる活動が成功の鍵といえます。
PM(生産保全)実践のポイント
- 4つの基本活動の活用:保全予防・予防保全・事後保全・改良保全を設備重要度に応じて使い分ける
- TPMとの相互連携:技術的な手法であるPMと、組織的な仕組みであるTPMを両輪で機能させる
- 実践手法の最適化:定期保全(TBM)や状態基準保全(CBM)を現場の状況に合わせて選択する
- 継続的な運用改善:一度決めた計画に固執せず、データや現場の声をもとに柔軟に見直す
PMの適切な運用により、突発的な停止リスクを低減し、安定した生産体制の構築が可能です。自社の設備やリソースに合わせた保全計画を立案し、生産性の向上を目指していきましょう。
MONiPLATでPM(生産保全)の取り組みを支えよう
生産保全を継続的に運用していくためには、日々の点検業務や定期保全を無理なく管理できる仕組みづくりが欠かせません。設備管理の課題を解消し、保全業務の効率化と可視化を実現するには「MONiPLAT(モニプラット)」の導入をご検討ください。
MONiPLATは、スマホやタブレットを活用して設備点検の記録を作成・管理できるクラウドサービスです。点検表のペーパーレス化と、リアルタイムで点検結果の確認も可能となるため、異常の早期発見と現場へのフィードバックも当日中に可能です。
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またMONiPLATは20設備まで無料利用が可能です。点検項目が少ない設備から導入するといったスモールスタートにも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

著者
藤田 ユウキ(ふじた ゆうき)
BtoB・製造業ジャンルを中心に活動する専業Webライター。 光センサやEMS(電子機器受託製造)など、高度な専門知識が求められる技術分野での執筆実績が豊富。徹底したリサーチとSEOの知見に基づき、難解になりがちな製品や技術を、導入検討層に向けてわかりやすい解説が強み。単なる用語解説にとどまらず、企業の課題解決と意思決定を後押しする情報発信を心がけている。